LINEビジネスコネクトが置き換えるのはトランザクションメール!?メールマーケティングの本丸は厳しいかもしれない

 おk。わかった、冷静になろうか。

 LINEビジネスコネクトが発表されて各方面でワッショイワッショイされていましたね。そこはいつか見た光景、LinuxでWindowsオワコン、評価経済で貨幣経済オワコンなどの実体より願望・思惑が入り乱れた観測気球が多数打ち上げられている景色でした。

 喧騒が落ち着いた今、あらためてこのLINEビジネスコネクトを考えてみたいと思います。LINEビジネスコネクト自体については優れた解説記事がいくつもあるので、そちらを参照していただくとして、ここではLINEビジネスコネクトはメールマーケティングを破壊するのかという点に絞って考えてみます。

企業がユーザーとやりとりするメール3種類

 LINEビジネスコネクトによってメールマーケティングはオワコンになるのか? メールマーケティングという括りで比較するなら、「一部ではそうなるかもしれないけれど、そうならない部分もある」というウ◯コみたいな感想になっていまします。

 比較対象がよくない。「メールマーケティング」というくくりで比較したらウ◯コしか出てこないので、企業がユーザーとやりとりするメールを一度整理してみます。オレオレ分類では企業とユーザーとやりとりするメールは大きく3種類。

トランザクションメール

コミュニケーションメール

マーケティングメール

 それぞれの利用イメージ、配信起点、そしてLINEでよくでてくるリアルタイム性という物でそれぞれの特徴をまとめると以下のようになります。

No タイプ 利用イメージ 配信起点 リアルタイム性
1 トランザクションメール 注文受け付けメール 企業(ユーザーのアクションに反応)
2 コミュニケーションメール サポート 顧客
3 マーケティングメール メールマガジン 企業

 多くの人が要望・願望としてLINEビジネスコネクトによって破壊して欲しいのは『3』のマーケティングメールですよね。メールマーケティングがオワコンというより「メールマガジンよオワコンなれ」です。

 翻って現在LINE社が発表しているLINE ビジネスコネクトの利用イメージを見てみます。【LINE】LINE、グローバル市場でのさらなる成長に向け、「BEYOND LINE」をテーマに3つの新サービスを発表によると次の3つがあげられています。

  • 公式アカウントへピザのスタンプを送信するだけで宅配ピザの注文ができたり、
  • レンタルしていた商品の返却日前日にLINEで通知を送ったり、
  • LINEから位置情報を送信してタクシーの手配

 あれ、、、たしかに実現すると面白いですが、これはトランザクションメールやコミュニケーションメールの置き換えであって、マーケティングメール(=メルマガ)の置き換えではないですね。どうもメールマガジンオワコンにしたい人たちの願望とはミスマッチがありそうです。

LINE ビジネスコネクトが作り出す未来

 なにも「LINE ビジネスコネクトとか必要ない。やっぱりメールだよ。」とか言いたいわけではないのですよ。今のメールマーケティングがあまりにも問題が多すぎる事は火を見るより明らかだし、可能ならなにかもっと良い仕組みで置き換わるべきです。

 ただ、願望と予測は分けるべきです。願望としてはメルマガとか早くオワコンになってほしいけれど、予測としてはLINE ビジネスコネクトではメールマーケティングの全てを置き換える事はできない、というのが多くの人の実感ではないでしょうか。

 メルマガを置き換えることができないからLINE ビジネスコネクトは使えないわけではありません。トランザクションとマーケティングメールがかぶる部分、つまりユーザーの行動をトリガーとしてOneToOneでのメッセージング、とくにネットとリアルとの組み合わせでは夢のある未来がありそうです。

 iBeacon(BLE)で来店情報を察知したけれどもPOSで販売が確認されなかったユーザーに、スタンプ贈ってECショップへ誘導するとか、位置情報みて次回来店を促すようにするとか、いわゆるO2Oあたりでは非常に有効なコミュニケーションチャネルになる可能性が大です。

 LINEビジネスコネクトが比較すべき対象は一斉スパムメールマガジンではなく、ECのカート落ち対象に送った、メールとかDSPですよね。誤った比較をしてしまい、期待値ギャップゆえにLINEビジネスコネクトが正しく評価されないというオチはかかわる人たちにとって避けたい未来なのではないでしょうか。

マーケティングだけでないLINEビジネスコネクトの未来

 個人的にはLINE ビジネスコネクトで期待したいのはHUBOTのようなサービスが生まれる事です。

LINEがビジネスをコネクトし出すと、どんなエコシステムが生まれるのか【連載:えふしん】 - エンジニアtype

 ここで紹介されているLGの事例とかすっごいワクワクします!!! 似たような未来は過去に何度か描かれていますが、専用アプリをつかうのではなくメッセージングアプリがインターフェースになるというのは期待が膨らみます。まぁ、これはこれで『M2M』とか『IoT』とかバズワードと組み合わせて我田引水ワッショイする人が増えてきそうですが……

 インターネットの中だけに閉じずにリアルとの架け橋のためにLINEがインターフェースになると素敵ですね。

メールマーケティングの失敗を生かさないために。

 話をマーケティングに戻します。

 LINEがもっているメールに対する一番の優位性は「企業からのメッセージ配信数が少ない」ですよね。間違いなく。ここが担保されているので、ユーザーは安心してLINEからの「通知をON」にできます。もしこれが企業からじゃんじゃん通知が来たらどうでしょうか。私なら迷わずLINEをやめて乗り換えるか、少なくとも通知をOFFにします。LINEに求めるのは『人』とのコミュニケーションであって『企業』とのコミュニケーションではないからです。

 (だめな)企業側の論理だけで「LINEは既読が分かるからいいよ」「これを利用して既読になったらとほげほげする」なんてシナリオをバンバン採用したら、既読にすることを嫌ってメッセージを読まなくなるでしょう。嫌っていたはずのメールの失敗をなぞるだけ。メールと違うのはレイヤーが上のアプリケーションであるがゆえにリプレイスも簡単という事です。

 LINE社には利用企業の選別から始まり、APIコール数上限やコール間隔など、ユーザー体験を毀損しないで企業のマーケティング活動を促進できる仕組みにしていただけるように切に願います。あと、金額もお安く。。。

他のメッセージングサービスは追随するのか

 LINEビジネスコネクトに対して、他のメッセージングアプリはどう出てくるのでしょうか。LINEビジネスコネクトが成功すればきっと同様の仕組みを採用して追随してきますよね。近い未来では、メッセージングアプリが色々な通知のインターフェースになっていくのかもしれません。(Apple様がこうなった時に許すのか?というリスクがありそうですが、、)

 こうなると、企業側としてはユーザーに何かを伝えたい時に、従来は「メールという一つのプロトコル」で対応出来ていたのに、各アプリケーション毎に異なるプロトコルに対応しなければならない、という状態に陥ります。やだなぁー。

 まあ、この流れが進んでいくと「LINEのAPI」「ViverのAPI」というように個別サービスのAPIを叩くのではなく、きっと生まれてくる「メッセージングアプリ個別のAPIをラッピングして抽象化してくれている外部サービス」を利用する事になるでしょうが。SESとかSendgridとかのメッセージングアプリ版のイメージですね。

統合から分断へ、そして再度統合へという揺り戻し

 これから暫くはメールという統合されたコミュニケーションチャネル一辺倒から、各メッセージングアプリの比重が上がるという形で対応すべきコミュニケーションチャンルの分断が進むのでしょうね。

 しかし、サービス連携が増えれば増えるほど障がい耐性は弱くなりますし、分断化は「様々な調整工数を増大させて本来の価値創出に時間がさけなくなる」事は歴史が証明してくれています。

 これらの分断化による問題が抜き差しならぬ状態まで進行して、みんなの不満がたまりにたまると、再度統合へと揺り戻しがくるのではないでしょうか。で、この時が、メールマーケティングが終わる時かも知れませんね。

 きっと、アプリケーション層のLINEとかではメールマーケティングの一部は切り崩せても本丸は崩せないでしょう。メールマーケティングを木っ端みじんに吹き飛ばすのは、インターネットではない何か別の基盤によってではないですかね。

『メールマーケティングは最悪のマーケティング形態だ。ただし、これまでに試された他のマーケティング形態を別にすればの話である。』

 ◯◯2.0とか新世代☓☓ではメールマーケティング全体を駆逐するのは厳しそうです。なにかまだ見ぬ革命を夢見はしますが、それとは別に冷静な目で見つめたい所存。