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頭のなかはバガボンド。宮本武蔵(吉川英治)の書評

 いまさらですが、年末年始のまとまった時間に長編小説を読もうと心に決めて、吉川英治の『宮本武蔵』を読んでました。言わずと知れた名作のため私ごときがあ~だこ~だいうことはございません。ただ……

 宮本武蔵が頭のなかで「井上 雄彦のバガボンド」として再生されるんですよ。これがもういちいち小気味良い。楽しい。「あれ、小次郎は耳が不自由なのに。あ、あれはコミックだからか」的な設定の違いを脳内置換を要する事もありますが、それすらも良い。吉川英治の素晴らしい文章を堪能しつつ、頭のなかでバガボンドの再生を楽しむ。一粒で二度美味しい。一石二鳥。

 無粋な引用は解説はシラケさせる効果しか無いことを理解しつつ、ひとつだけ。

「勘」は、無知な動物にもあるから、無知性の霊能と混同され易い。智と訓練に研かれた者のそれは、理論をこえて、理論の窮極へ、一瞬に達し、当面の判断をつかみ取って過らないのである。」という

 というくだりがある。これを読んだ時に、脳科学者の池谷 裕二氏が「脳には妙なクセがある」などで指摘していた「意識より先に無意識が動いている。優れた無意識を生みだすには優れた経験が必要」というような事を思い出した。

 うえのくだりは、作者の吉川英治が生み出した言葉です。この作品が生まれた昭和初期は、脳科学が今ほど発達はしていなかったため、これは知識を言葉に落としたのではなく、一流だけがたどりつける感性と言葉を、科学が証明したといえるのではないでしょうか。鳥肌モノである。いや、ここは作品にあわせて肌に粟と言うべきだろうか。

宮本武蔵

宮本武蔵

いのうえの 満月篇

いのうえの 満月篇

脳には妙なクセがある

脳には妙なクセがある