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アップル帝国の正体の書評

書評

アップル帝国の正体

アップル帝国の正体

週刊ダイヤモンドの記者である著者による「アップル帝国」に迫るドキュメント。なにかすごく目新しいかと問われれば疑問符がつくが、裏取りがきちんとされた取材に基づいて構成されているので、Webをあちこちかじるよりは確実に良いです。書籍の醍醐味ですね。

下請けに転じる日本の技術力

本書ではかなりの部分を帝国に依存する下請けに体質になった日本企業についての言及にさかれています。名だたる大企業であっても下請け体質にならざるをえない箇所も面白いですが、何より記憶に残ったのは以下

それまで累計100万個近いiPodの背面を磨いてきた小林の「匠」の技術は、参考資料としてビデオにしっかりと録画され、どこかアジアの別の国に“〝移植”〟する際のお手本になるのかもしれなかった。 「iPodを磨く作業のビデオ撮影は3日間続きました。でも注文をくれる地場の親会社から頼まれたら、我々は断れませんからね」  ビデオ撮影を受け入れてからほどなくして、小林はこの仕事から手を引いた。そしてピーク時には地元の研磨業者約20社が1日で1万5000~2万台も磨き上げていたiPodの仕事は、地元から消えてしまったのだ

iPodの背面は当初「日本の匠」の技無くしてありえなかったようです。しかし、帝国はその様子をビデオにおさえて技術移転を行い、「日本の匠」の元から仕事はなくなりました。牧歌的に技術を見せる職人と、それを奪取する帝国。なにが正しいのかなどを論じるつもりはありません。これはもう文化の違い。

ただ、大航海時代に欧米も帝国が現地から搾取をしていた姿をコレに重ねるのは、本書のタイトルに「帝国」と入っていることだけが理由ではないないでしょう。

イノベーションとインプルーブメント

競合他社を寄せつけないアップルの圧倒的な強さは、そのビジョンを実現させてしまう組織の「遂行力」にある

イノベーション企業として名高いアップルの強みが「遂行力」であると本書は述べます。同様のことは、元アップルも松井氏も述べられていた記憶があります。丹念に取材して得た外部からの結論、長年の内部の視点から得た結論それが同じ方向であるという事はそれだけ真実に近いという事でしょう。

イノベーション(破壊的想像)には、圧倒的なインプルーブメント(改善による生産性の向上)が必要である。プロダクトにイノベーションを起こしたければ、プロセスにもイノベーションを起こす必要がある。という事でしょうか。

これは歴史のサイクルでもあるんだけど、アップルが売れる商品を作っている限りは、彼らが『王様』だからね

身も蓋もないが、下請けに転じた日本企業が述べるコレが現実なのでしょう。帝国は王様であり続けるための「遂行」し続ける事でしょう。そして、帝国に取って代わるためには結局売れる商品を作って自らが帝国になるという道しかないのかもしれません。

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