雨後の筍の使い方を調べているとなんとも言えない気持ちになってきた

雨後の筍をずっと「うごたけのこ」と(の)抜きで使っていた私に注意してくれるのはGoogle先生だけでした。

言葉間違いだけでなく、意味まで間違って使っていると怖いので、言葉の意味を調べると、

《雨が降ったあと、たけのこが次々に出てくるところから》物事が相次いで現れることのたとえ
◆成長が早いことの意で使うのは誤り。
雨後の筍 とは - コトバンク

と出てきます。意味は大丈夫でした。が!注釈が気になります。

◆成長が早いことの意で使うのは誤り。

わざわざ注釈をつけているという事は一般的に誤用がおおいということなのでしょうが、私は「成長が早い」という意味で雨後の筍を使っている人も、文章も見たことが無いです。これは、私の観測範囲があまりに狭すぎるだけで世間一般ではよく間違う使い方として市民権を得ているのか?それとも、過去に誤用が多かったが今は絶滅しているのか。もしくは地域限定で誤用がおおいのか。気になるので調べてみました。

筍の成長速度

誤用するという事は筍自身が早く成長しなければなりません。大丈夫だと思いますが、そこから調べるためにタケノコをWikipediaで調べます。 タケノコ - Wikipedia

地表に顔を出す頃は日に数センチ程度だったものが、10日目頃には数十センチから時には1メートルを超えるなど、ツル性を除く被子植物のうち最も成長が速いとされる。

確かに成長早いのが特徴みたいです。文字だけではイメージがつきにくいのでもっとイメージが湧くものが無いかとGoogle先生に聞いてみると以下が見つかります。

@nifty:デイリーポータルZ:雨後のたけのこ生中継
デイリーポータルZらしい企画ですね。これリアルタイムで見たかった。ただ、面白いけれども成長が早いというイメージを持つには少しパンチが弱い。動画みればもっとイメージがわくはず。という事で動画を探します。

雨後の筍(雨後のタケノコ) タケノコ成長動画 - YouTube YouTubeを検索すると、成長を動画で上げてくれている方がいらっしゃいました。 これを見ると、イメージできますね。確かに筍は成長スピードが早い!!ですよ。ね。

筍は次々と現れるのか

ここでふとした疑問が頭をよぎります。筍の成長スピードについて様々な結果が出てきますが、筍は「次々に現れる」を表す結果が出てきません。うーん。これでは「雨後の筍」の言葉の使い方として、「成長が早い」というのが誤用ではなくて「次々に現れるという本来の使い方が間違っている」という結論になってもおかしくありません。

このままでは腑に落ちません。遠回りかもしれませんが、この本来の使い方である「次々と現れる」という特徴を筍が持っているという確証を探します。

そもそも次々と現れるというイメージを持つためにはどのような要件が必要でしょうか。どうすれば「続々と現れているなー」という思いに至るのか自分の中で整理してみると、

  • 高い密度
  • 短い期間
  • 速度が早い

という3つの条件が思い浮かびます。高い密度で短い期間に速度が早く現れてくると「次々と現れているな」という事になります。この条件を「雨後の筍」に当てはめてみます。

「速度が早い」は既に解決済みなので、「高い密度」、「短い期間」をクリアすればよさそうです。

高い密度

筍(竹)の密度を検索すると「間伐に適正な密度」的な資料が多く引っかかります。しかし、調べたいのは、人口的な竹林の適正密度ではなく、「自然竹林は密度が高いのか」なので間伐の前の密度がわかる資料を探しました。

探すと、大分県農林水産部林産振興室が平成20年に行った、竹林等実態調査報告書が見つかりました。
www.pref.oita.jp/uploaded/life/9437_14277_misc.pdf
これによると大雑把に20,000〜30,000本/ha の密度になっているようです。

「先生!僕の頭ではこの数字で密度の高低は皆目見当つきません!!」

他の樹木と比較します。

www.mlit.go.jp/common/000118399.pdf
この資料を見ると間伐前でざっくり1,500本/haという形になっているので竹の密度の高さが際立っていますね。

サンプル数が少なくきちんとした検索結果ではないですが、、、一旦はこれで結論づけます。

筍の発生密度も高い

短い期間

いくら、密度が高く、スピードが早いといっても、発生期間がバラバラでは「続々と現れる」というイメージは持てないです。密度が高くスピードを持っている筍ですが、「短い期間」で発生しないと続々と現れる称号は手に入れることができません。

調べていくと筍の発生期間は、「出始め」・「出盛り」・「出終わり」という3段階に分けることができ全体で40〜50日、「出始め」については7日から10日に限られている模様です。これは、かなり短い期間ですね。さらに、出盛りの時期に雨量が多いと筍の量は増えてくるようなので、今までお留守になっていた「雨と筍の関係」問題も一気に解決して、雨後の筍が「次々と出てくる」という意味で利用する事は全く問題無くなります。

【参考】

筍は半数以上が腐る

それた脇道をかなり進んでしまいました。

上で調べた結果では、雨後の筍が「続々と現れる」という使い方で問題ないという結論を得ることが出来ましたが、「雨後の筍」を成長スピードが早い使い方は誤りであるという理由にはなりません。

現場百遍ならぬWikipedia百遍で、Wikipediaに戻ってみると見落としていた衝撃的な記述を発見します。

地上に顔を出してから間もなく成長が止まり、そのまま枯れて腐ってしまう、止まりタケノコと呼ばれる現象があり、その数は全体の半数から7割に達するという。

筍は全体の半分以上が途中で成長が止まり腐ってしまう。続々と現れるけれど半分以上は成長が止まり腐る。悲しいですね。

この事実を知った後で、雨後のタケノコ状態、Groupon類似サービスまとめ【ループス斉藤徹】 | TechWaveを見ると非常に感慨深いものがあります。

悲しき筍の用法

短期間の高い密度で成長スピードが早いモノが続々と現れる事がある。ただし、その大部分は成長しきる事なく腐り朽ち果てる。

これは筍だけでなく、Webサービスだけでもなく、万物共通のルールです。そう考えると、死屍累々を内包している「雨後の筍」はポジティブ一辺倒に使っていいものではないことがわかります。

対して、「成長スピードが早い」は生まれ持ってのポジティブな輝きを放っています。ゆえに「雨後の筍」の意味としては不適切であると言えますね。

笑顔でポジティブに成長スピードが早い意味で「雨後の筍」を利用している若人を、過去に辛い経験をした翁が苦虫を噛み潰した優しい顔で眺めている姿が目に浮かぶようです。その後、翁は若人に対して雨後の筍のその後をポツポツと語りだしていくのです。キラキラ輝いていた出始めの時期。次第に不協和音が発生した時期を経て、朽ち果て手元に残ったのは虚無感。しかし若人は、それは翁の場合で自分は大丈夫と笑顔で言い捨て歴史の再現性に向けて邁進していく。。

こうやって「雨後の筍」を「成長スピードが早い」という誤用が生まれて消えていったのかもしれませんね。